「なんという幸せ」 ヴィスワヴァ・シンボルスカ(Wisława Szymborska)
なんという幸せ
自分がどんな世界に生きているか
知らないでいられるのは
人はとても長く
生きなければならないだろう
世界そのものよりも
断固としてずっと長く
せめて比較のためにでも
他の世界を知らなくては
人をしばり、厄介なことを
生み出す以外には
何も上手にできない
肉体の上に飛び上がる必要がある
研究のために
図柄の明快さのために
そして最終的な結論のために
時間の上に舞いあがること
この世のすべてを疾駆させ、渦巻かせる時間の上空に
この見晴らしから
些細なものたちに、ちょっとした挿話たちに
永久の別れを言おう
ここからならば、一週間の日数を数えるなんて
無意味な行為に
見えるにちがいない
手紙を郵便ポストに入れるのは
愚かな青春のいたずらに見えるし
「芝生を踏むべからず」の注意書きは
狂った注意書きに見えるはず