「灯(ともしび)」 茨木のり子

人の身の上に起こることは
我が身にも起こりうること

よその国に吹き荒れる嵐は
この国にも吹き荒れるかもしれないもの

けれど想像力はちっぽけなので
なかなか遠くまで羽ばたいてはゆけない

みんなとは違う考えを持っている
ただそれだけのことで拘束され

誰にも知られず誰にも見えないところで
問答無用に倒されてゆくのはどんな思いだろう

もしも私が そんな目にあったとき
おそろしい暗黒と絶望のなかで

どこか遠くにかすかにまたたく灯がみえたら
それが少しづつ近づいてくるように見えたら

どんなにうれしくみつめるだろう
たとえそれが小さな小さな灯であっても

よしんば
目をつむってしまったあとであっても