「朝の食事」ジャック・プレヴェール(Jacques Prévert)



茶碗に

コーヒーをついだ

茶碗のコーヒーに

ミルクをいれた

ミルク・コーヒーに

砂糖をいれた

小さなスプンで

かきまわした

ミルク・コーヒーを飲んだ

それから茶碗をおいた

私にはなんにも言わなかった

タバコに

火をつけた

けむりで

環をつくった

灰皿に

灰をおとした

私にはなんにも言わなかった

私の方を見なかった

立ちあがった

帽子をあたまに

かぶった

雨ふりだったから

レインコートを

身につけた

それから雨のなかを

出かけていった

なんにも言わなかった

私の方を見なかった

それから私は

私はあたまをかかえた

それから泣いた。








「家族の唄」ジャック・プレヴェール(Jacques Prévert)



おふくろが編物をする

息子が戦争をする

これは当然のこと とおふくろは思う

それならおやじ おやじは何をする

おやじは事業をする

家内は編物

息子は戦争

わしは事業

これは当然のこと とおやじは思う

それなら息子 それなら息子は

どう思う 息子は

息子はなんとも思わない 何とも

おふくろは編物 親父は事業 ぼくは戦争

戦争が終ったら

おやじと二人で事業をするだろう

戦争がつづく おふくろがつづく 編物をする

おやじがつづく 事業をする

息子が戦死する 息子はつづかない

おやじとおふくろが墓参りをする

これは当然のこと とおやじとおふくろは思う

生活がつづく 編物と戦争と事業の生活

事業と事業と事業の生活

生活とお墓が。